ただただ休みたい。何もせず1日中ぼんやりしていたい。
ある秋の日、渇望感でいっぱいになった私は、家族に宣言した。
「今週末、旅行しましょう。しかし観光は一切しませんよ」と。
向かった先は石和温泉である。
新宿から、特急かいじで約1時間半。電車の揺れが心地よく、ビル群から住宅街、ちらほらと山が見え始めたのをぼんやり眺めていたらあっという間である。
石和温泉駅から送迎バスに乗ること数分。
ホテルふじが目の前にあった。
私はここに「休み」に来たのだ。
15時にチェックインすると、和室の部屋にはすでに人数分の布団が敷いてあった。
客室は十分な広さがあったので、布団が邪魔になることはなかったし、なにしろ私は「休む」ためにこの宿に来たわけなので、布団の存在は有り難かった。
山梨県内で最大級とされる岩風呂で温泉に浸かった。お湯はややぬるめ。おかげでのぼせることなくゆっくりと入ることができた。
夕食はバイキングだった。偏食家の家族の希望である。
バイキングというより「ホテルビュッフェ」と呼ぶに相応しい食事内容で、これには家族全員大満足。お寿司に天ぷら、ステーキに松茸、季節のデザート。和洋中、さまざまな料理が用意されており、どれも美味であった。
朝食もバイキングで、これまた期待以上。
ホテル予約サイトのレビューにあった「食事が美味しい」という言葉を信じてこの宿を選んだわけだが、それは正解だったと思う。
じっくりと温泉に浸かり、布団でごろごろして、バイキングで好きなものを好きなだけ食べた。
帰る頃には、あんなにも「休む」ことを渇望していたことなどすっかり忘れていた。
ホテル内にはプールもあった。次は夏にしようか。
お気に入りの宿がまた一つ増えた。